軸(掛物)の楽しみ方

第4号【2006年 春】

亭主は季節やお招きするお客様に合わせて道具類を選びます。茶事や茶会の主題を表現する最も重要なものが掛物です。
掛物を拝見するときは、書かれた言葉の意味や精神性を通して、亭主の心を感じとりたいものです。
はじめは書いてあることがわからないかもしれませんが、何度か眺めるうちに何となく理解できるようになってまいります。
今回は沢山ある掛物の中より「一行物」三つをご紹介いたします。

日々是好日
(読み方)
にちにちこれこうじつ


◎これは中国の唐末の雲門文偃禅師の言われた有名な言葉です。意味は、毎日毎日が最良の日である。雨の日もまた辛い日も悲しい日も、それを「良き日」と受け取っていくことです。これは口で言うのは簡単ですが、しかし本当に「日々是好日」という気持ちで人生を送れる人が、はたして何人いるでしょうか。毎日よいことばかりあるはずがありません。しかし悪い日も良き日も「受け取れる心」、さらに、悪い日を良き日と「転ずる心」があれば、どんな日だって「好日」になるのです。

洗心
(読み方)
せんしん


◎「聖人は此を以って心を洗う」という古語があります。神仏に詣でるとき、手水鉢で手を洗い口を清めるが、同時に自らの「心」を洗い浄めることが肝心であろうという意味。手脚の汚れは目についても、心の垢には気が付かない。自省の座右の語として重く奥深いものです。

桃花笑春風
(読み方)
とうかしゅんぷうにえむ


◎春風が心地よく吹く中で、今年も変わらず桃の花や桜の花を眺めることができる喜び。生きていることへの感謝の念が湧いてきます。人の姿は変わっても花の姿は変わらず毎年愛らしく咲き、良い香りを放ちます。同じように、仏の教えも変わることなくくり返しくり返し同じことを説いているという禅語です。